連連国際とPayPal提携が変える越境EC送金の現場

連連国際とPayPal提携が変える越境EC送金の現場

ニュースの概要

中国発の決済事業者である連連国際とPayPalが、越境ECの送金サービスで提携した。ソーシャルコマースやマーケットプレイス、EC事業者が、クリエイターやインフルエンサー、開発者、業務委託先へ支払う際、PayPalアカウントに直接送金できる。対象は96市場、24通貨に及ぶ。米国ではVenmoの利用者にも支払える。受取人のメールアドレスや携帯電話番号を宛先にできるため、銀行口座番号など送金先情報を一件ずつ集めて管理する手間が減る。売上を受け取る側の決済に比べ、後回しにされがちだった「支払う側」の仕組みを整える動きである。

引用元: 連連国際とPayPal、96市場向けの越境ECペイアウトで提携(PR Newswire)

分析・見解

注目すべきは「受け取り」ではなく「支払い」の側

越境ECの決済というと、海外の購入者からどう代金を受け取るかが話題になりやすい。今回の提携が狙うのは逆方向だ。事業者が海外のクリエイターや外注先へ報酬を払う場面である。

ソーシャルコマースでは、紹介料や成果報酬を払う相手が数百、数千人に増える。しかも相手は個人で、国も通貨もばらばらだ。ここで銀行振込を使うと、口座情報の収集、手数料の差、着金の遅れが積み重なる。支払う側の事務負担は、売上が伸びるほど重くなる。

宛先がメールアドレスで済むことの意味

今回の仕組みで大きいのは、宛先がPayPalアカウントに紐づく点だ。銀行口座番号やSWIFTコード(=国際送金で銀行を特定する番号)を集める必要がなくなる。誤入力による送金戻しも減らせる。

さらに、口座情報という機微な個人データを自社で預からずに済む。これは情報漏えいのリスクを減らし、各国の個人情報保護の対応を軽くする効果もある。事務の簡素化に見えて、実は法務とセキュリティの負担を下げる話でもある。

既存の海外送金サービスとの違いと競争の構図

海外送金では、Payoneer、Wise、Airwallexなどが先行してきた。これらは受取人に自社口座を作らせる方式が中心だ。一方、PayPalは受取人側にすでに数億規模のアカウントがある。新しい口座を開設してもらう手間がなく、受取人が使い慣れた財布にそのまま届く。

連連国際にとっては、PayPalという受け皿を得ることで、中国系事業者の海外展開を支える決済網の厚みが増す。PayPalにとっては、中国系マーケットプレイスの出店者や、アジア発のクリエイター経済へ入り込む足がかりになる。両社の弱いところを互いに補う組み合わせだ。

見落としやすい論点は為替と規制対応

注意したいのは、送金が簡単になっても為替コストが消えるわけではないことだ。24通貨に対応していても、どの時点でどのレートで換算されるかによって、受取額は変わる。また、96市場に送るということは、制裁対象や本人確認の基準が国ごとに違う現場を通るということでもある。簡単な送金画面の裏側で、事業者側にも一定の確認責任が残る。便利さと引き換えに、運用ルールを自社で設計する必要が出てくる。

ビジネスへの影響

まず自社の支払い先を数えて棚卸しする

越境ECを営む企業は、海外の支払い先が何件あり、どの方法で払っているかを一覧にしたい。紹介料の支払いが月に数十件あるなら、手作業の銀行振込で人件費が静かに膨らんでいる可能性がある。件数、一件あたりの手数料、着金までの日数を出せば、乗り換えの採算が見えてくる。

日本の事業者にとっても他人事ではない。海外在住のデザイナーや翻訳者、アフィリエイターへの報酬は、すでに身近な支払いだ。連連国際を経由するかは別として、PayPal宛ての一括送金という選択肢が現実的になったと考えてよい。

導入前に確かめる三つの条件

一つ目は手数料の総額である。送金手数料だけでなく、為替の上乗せ幅と、受取人が引き出す際の費用も確認する。二つ目は対象国の範囲だ。96市場といっても、実際に支払いたい国が含まれるかを個別に見る。三つ目は帳簿と税務の処理である。海外の個人への報酬は、源泉徴収や支払調書の扱いが相手の居住地で変わる。

小さく始めるなら、まず一国、一種類の報酬に絞って試すのがよい。結果をみて対象を広げれば、失敗の損失を小さくできる。支払い方法の選択肢が増えるほど、クリエイターとの関係づくりでも有利になる。「払いやすい会社」は、優秀な外部人材から選ばれやすくなるからだ。

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