ZenGroupが示す越境EC成功の5つの提言を読み解く 物流と運用で差がつく実務の勘所
ニュースの概要
物流専門メディアのLOGISTICS TODAYは、ZenGroupが越境EC(国境をまたぐネット通販)に取り組む事業者に向けて、成功のための5つのポイントを提言したと伝えた。円安や海外需要の拡大を背景に、日本の中小事業者や地方ブランドが海外の消費者へ直接商品を売る動きは広がっている。一方で、物流、決済、法規制、顧客対応など、国内販売とは勝手が違う論点が多く、参入後に壁にぶつかる企業も少なくない。今回の提言は、そうした現場の課題を整理して示したものと位置づけられる。なお、5つの項目の細かな中身は元記事に譲り、本稿ではこの提言が示す方向性を、実務の視点から読み解いていく。
引用元: ZenGroup、越境ECで5つのポイントを提言(LOGISTICS TODAY)
分析・見解
物流の専門媒体が取り上げた提言が示す変化
越境ECの相談は、かつて「どのモールに出すか」「翻訳をどうするか」といった販売面が中心だった。今回の提言が物流の専門媒体で報じられたことは、重心が移ったことを物語る。売り場を作る作業より、届けて、返品を受け、代金を回収するまでの流れが、成否を分ける段階に入ったということだ。
実際、国際配送の日数や関税の扱いは、国や時期によって大きく揺れる。米国では2025年に少額輸入品の免税措置が見直され、購入者の負担増や配送の遅れが問題になった。商品に魅力があっても、届け方が不安定なら評価は下がり、リピート購入にはつながらない。
5つの提言に共通する、仕組みで回すという発想
個々の項目は元記事に譲るが、この種の提言に共通するのは、担当者の頑張りに頼らず、仕組みで回す発想だろう。最初の数件の注文は手作業でさばける。しかし国と件数が増えると、すぐに行き詰まる。住所表記の違い、関税の事前計算、梱包サイズの調整、時差のある問い合わせなど、小さな手間が積み重なるからだ。
売上が伸びる局面ほど、利益が削られやすい点も見逃せない。送料の補填や返品対応が膨らみ、販売数は増えても手元に残る額が増えない例は珍しくない。
国内で成功した人ほど陥りやすい三つの思い込み
ここに独自の見方を一つ加えたい。越境ECで苦戦する事業者には、国内ECの成功体験がかえって足かせになっている人が多い。
第一は送料の感覚だ。国内では送料無料が当たり前でも、海外では原価を大きく圧迫する。第二は返品への考え方だ。欧米では、試して合わなければ返す前提で買う人が多く、特に衣料品や靴では返品が日常的に起きる。第三は待ち時間への許容度である。国内の翌日配送に慣れた感覚のまま運用すると、「荷物はどこか」という問い合わせが一気に増える。
これからは売る力より、届けて続ける力が問われる
今後、翻訳や関税の自動計算といった作業は、AIや各種サービスで標準化が進み、差がつきにくくなる。最後に残る差は、現地在庫をどこに置くか、返品をどう処理するか、遅延が起きたときにどう顧客へ知らせるかといった、運用の質である。物流事業者も、単なる運び手から、通関、在庫、返品、決済まで支える伴走役へと役割を広げていくだろう。今回の提言は、その流れを先取りした整理として読める。
ビジネスへの影響
参入前に試算しておきたい三つの数字
まず、送料と関税を含めた国別の粗利を計算する。次に、返品率を高めに見積もった場合の利益を確認する。最後に、注文から到着までの日数と、その間に発生する問い合わせ件数の想定を置く。この三つで赤字になるなら、販促を強める前に、商品構成や価格を見直すべきだ。特に単価が低く、重くてかさばる商品は、送料負けしやすい。社内の経理担当とも早めに数字を共有しておくと、後の判断が速くなる。
委託先を選ぶときに必ず聞きたい質問
物流会社や代行会社には、次の点を具体的に確かめたい。関税を販売者が先に負担する方式(DDP=関税込みで購入者に届ける方法)に対応できるか。返品の受け取り先は現地にあるか。追跡情報はどこまで細かく見られるか。繁忙期に追加料金や受付制限はないか。料金表の安さだけで選ぶと、あとから例外費用が積み上がることが多い。見積もりは、通常月と繁忙月の両方で取ると比べやすい。
小さく始めて、国を絞って学ぶ
最初から多くの国へ売ろうとせず、1〜2か国に絞るほうが学びは早い。最初の3か月は、利益よりも、遅延の原因、返品の理由、問い合わせの内容を記録することに力を注ぐ。そのデータが、梱包の改善や商品説明の修正、委託先の見直しに直結する。担当者が一人でも回る手順書を作っておけば、拡大時の混乱も抑えられる。