越境EC事業者の口座開設が変わる:DogPayの米ドル・多通貨口座

越境EC事業者の口座開設が変わる:DogPayの米ドル・多通貨口座

ニュースの概要

香港の決済企業DogPayは、越境取引や国際EC、SaaS、フィンテックを手掛ける企業向けに、Enterprise Global Accountの提供を広げた。企業は一つのオンライン窓口から、米ドル口座と、香港・シンガポールの多通貨ビジネス口座を申請できる。口座ができれば、海外売上の受け取りや越境送金、複数通貨の資金管理に使える。さらに、カードサービスや決済APIにもつなげられる。これまで国ごとに別々に進めていた口座開設と決済連携を、一つの流れにまとめる狙いがある。API、SDK、プラグインでの接続にも対応する。

引用元: DogPay、越境事業者向けの米ドル・多通貨口座をオンライン申請可能に(GlobeNewswire)

分析・見解

口座開設の手間が、海外販売の最初の壁だった

越境ECで売上を伸ばしたい事業者が最初につまずくのは、商品や物流よりも、お金の受け皿づくりであることが多い。海外の銀行で法人口座を開くには、現地への訪問、書類の認証、数か月の審査といった負担がかかる。小さな事業者ほど、販売の準備は整っているのに入金先がない、という状態に陥りやすい。

DogPayの発表は、この入口をオンライン申請にまとめる点に意味がある。米ドル口座に加えて香港とシンガポールの口座を同じ窓口で申請できるため、アジア向けの販売拠点を作る際の準備が一本化される。

受け取りから送金までを同じ口座で回す設計

今回の特徴は、口座を作って終わりではなく、決済APIやカードサービスと同じ基盤につながる点にある。たとえば、海外の顧客から米ドルで入金を受け、同じ米ドルのまま仕入れ先へ支払えば、途中の両替が一度も発生しない。両替のたびに差額(為替スプレッド)と手数料が積み重なるため、通貨をまたがない流れは地味でも効果が大きい。

SaaS企業なら、サブスクリプション売上を受け取り、広告費をカードで払い、海外の外注先へ送金するまでを一つの仕組みで管理できる。経理の突合作業も減る。

先行する競合と比べたときの立ち位置

多通貨口座の分野には、Wise BusinessやAirwallex、Payoneerなどがすでにいる。特にAirwallexは香港発で、似た領域を押さえている。そのため、DogPayが機能の広さだけで勝つのは簡単ではない。差が出るとすれば、中国・香港・シンガポールをつなぐ地域への強さと、開発者向けの接続のしやすさだろう。

ここで見落とされがちな視点がある。口座の提供者が増えるほど、事業者にとっての論点は、どこで開くかから、何社に分散させるかへ移る。一社が止まったときに入金が止まるリスクを、複数口座で薄められるからだ。

規制と審査は、簡単になったわけではない

オンライン申請になっても、本人確認や資金の出どころの確認が軽くなるわけではない。香港やシンガポールの金融当局は、マネーロンダリング対策を厳しく見ている。業種によっては、審査で追加資料を求められたり、口座の利用が制限されたりする可能性もある。申請の手軽さと、審査の通りやすさは別物と考えておくのが現実的だ。

ビジネスへの影響

口座を増やす前に、お金の流れを図にする

多通貨口座を検討するときは、まず自社の入金と出金を通貨別に書き出してほしい。どの通貨で売上が立ち、どの通貨で仕入れや広告費を払っているかが分かれば、両替を減らせる場所が見えてくる。売上も支払いも米ドルが中心なら、米ドル口座の価値は高い。逆に、通貨が日本円だけで完結している事業者には、効果は限られる。

同時に、既存の決済サービスから乗り換えるコストも計算に入れたい。API連携の作り直しには開発費がかかる。手数料の削減額と比べて、回収に何か月かかるかを見積もると判断しやすい。

導入前に確認したい三つのチェック項目

一つ目は、自社の業種が審査の対象になるかどうかである。二つ目は、資金を日本円に戻すときの手数料と日数だ。三つ目は、口座が凍結されたときの対応窓口と、残高の扱いである。

最初から全額を移すのは避けたい。少額で運用を始め、入金の速さや担当者の対応を確かめてから、段階的に比率を上げていくのが安全である。越境の税務や規制の整理は、あわせて専門家にも相談しておくとよい。

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