欧州越境EC市場、Temu・Shein・AliExpressが9割超を独占する構造と中小事業者の対応策

欧州越境EC市場、Temu・Shein・AliExpressが9割超を独占する構造と中小事業者の対応策

ニュースの概要

欧州のEコマース調査会社による最新データでは、EU加盟国の消費者が域外事業者から購入した金額のうち、9割超がTemu、Shein、AliExpressの3社に集中していることが明らかになった。2025年の域外向け支出は491億ユーロに達し、越境EC市場そのものの拡大は続いているものの、その受け皿は少数の中国系プラットフォームへ著しく偏る構図が鮮明になっている。報道によれば2026年にはこの域外流出比率がさらに上昇する見通しで、販売代行や越境EC支援に携わる事業者にとって、集客チャネルの選び方そのものを見直す必要性が高まっている。

引用元: EU域外向け越境ECの支出先、Temu・Shein・AliExpressが9割超を占める(Ecommerce News Europe)

分析・見解

「越境EC」の実態は中国発プラットフォーム3社の寡占

欧州の越境EC市場拡大というニュースを聞くと、多種多様な海外ショップに消費が広がっているように聞こえる。しかし実際のデータは正反対で、EU域外に流出した491億ユーロのうち9割超がTemu、Shein、AliExpressという特定の3社に流れ込んでいる。つまり「越境EC市場の成長」のほぼすべてが、この3社の成長とイコールになっている。これは一般的な市場拡大とは質的に異なる現象で、個々の中小事業者が自前で欧州進出を試みる構図ではなく、巨大な中国系モール(=プラットフォーム)に消費者が吸い寄せられているという構図だ。

低価格×広告投下で築かれた「選ばれる理由」の構造

3社が9割超を占める背景には、単なる価格の安さだけでなく、SNS広告への莫大な投下と、検索エンジンを介さずに消費者へ直接アプローチする仕組みがある。Temuはメタ社やGoogleの広告枠を買い占める規模で出稿し、Sheinは若年層向けのインフルエンサー活用に長年の実績を持つ。AliExpressはAlibaba本体の物流網と信用力を背景に定着した。この3社は単品の価格競争力だけでなく、広告出稿、物流、決済、返品対応までを垂直統合している点で、個別のECサイトを運営する事業者とは競争条件がそもそも違う。

税制優遇の見直しが市場構造を揺るがす2026年

注目すべきは、2026年にこの流出比率がさらに上昇する見通しだという点だ。EUは低額輸入品への関税免除(150ユーロ未満の非課税措置)の撤廃を進めており、本来なら価格優位性が薄れるはずの3社がむしろシェアを伸ばすと予測されている。制度変更による価格上昇分を3社が物流・調達コストの最適化で吸収し、体力のない中小海外事業者が先に脱落する可能性がある。規制強化が目指した「公平な競争環境」とは逆の結果を招くリスクがある。

欧州販売代行・越境EC支援業にとっての分岐点

この集中構造は、欧州市場で独自に顧客を獲得しようとする事業者にとって厳しい環境を意味する。もはや「越境EC」の大半は3社経由の消費行動であり、それ以外のチャネルで欧州の消費者に直接リーチする余地は相対的に縮小している。今後は3社のマーケットプレイス内でのポジショニング支援か、3社が手を出さないニッチ領域への特化という、二極化した戦略が求められる段階に入っている。

ビジネスへの影響

集客費用の高騰を前提にしたチャネル戦略への転換

Temu・Sheinと同じ土俵で広告費を競うのは、資金力の小さい事業者にとって非現実的な選択だ。むしろ欧州の消費者がこの3社では満たせない需要、たとえば日本製であることの信頼感や、きめ細かいカスタマーサポート、特定ニッチの専門性を前面に出したポジショニングが現実的な対抗策になる。価格だけで戦う市場からは早期に退くべきだ。

2026年の関税制度変更を見据えた価格設計の見直し

EUの低額輸入免税撤廃は、価格体系の見直しを迫る契機になる。自社の商品が免税措置に依存した価格設定になっていないか、今のうちに点検しておく必要がある。免税がなくなれば末端価格は上がるため、関税込みの最終価格を前提とした欧州向け価格表示やLP(=ランディングページ)設計への切り替えが急務だ。

マーケットプレイス併用という現実的な落としどころ

独自サイトでの集客にこだわらず、むしろTemuやAliExpressのマーケットプレイス機能を自社の販路の一部として活用する発想も有効だ。彼らの集客力に相乗りしつつ、自社ブランドの信頼構築は別チャネルで行うという二段構えが、今の欧州市場で現実的な戦略になる。

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