ベトナム越境EC、デジタル通関が輸出の壁をどう下げるか
ニュースの概要
ベトナム政府と関係機関が、越境ECの伸びに合わせて通関手続きと貿易関連データのデジタル化を進めている。ハノイで開かれた越境ECフォーラムでは、税関システム同士のデータ接続、電子的な輸出手続き、通関業務の効率化が主な議題になった。オンラインで海外に売れる機会は広がっているが、国内企業が実際に取り込めている市場は限られているという。背景には、小口の荷物ごとに発生する書類作成や申告の手間がある。デジタル通関が定着すれば、こうした負担が軽くなり、中小の輸出者も参入しやすくなると期待されている。
引用元: ベトナム、越境EC拡大に向けデジタル通関を推進(MSNBC TV News)
分析・見解
小口荷物の増加に、紙中心の通関が追いつかなくなっている
越境ECの荷物は、一件あたりの金額が小さく、件数だけが膨らむ。大口の貿易なら、書類作成に半日かかっても利益で吸収できる。しかし数十ドルの商品では、申告の手間がそのまま赤字に直結する。
ベトナムで「売れる機会は多いのに、国内企業が取り込めている市場は限られる」と言われる理由は、需要の不足ではない。出荷までの事務コストが、小さな事業者には重すぎるのである。通関のデジタル化は、この事務コストを下げるための土台づくりと見るのが妥当だ。
税関システム同士をつなぐことの本当の価値
今回の議論で目を引くのは、画面を電子化することよりも、システム間のデータ接続が挙がった点だ。電子申告があっても、同じ情報を別の窓口で入力し直すなら、手間はほとんど減らない。
一度入力した商品名、数量、価格、送り先が、税関、物流会社、決済、税務の各段階へ自動で引き継がれれば、入力ミスによる差し戻しが減る。差し戻しが減れば、荷物が止まる日数も短くなる。越境ECで顧客満足を左右するのは配送の速さだから、この効果は大きい。
シンガポールが貿易手続きを一つの窓口にまとめ、申告時間を大きく縮めた例はよく知られている。ベトナムも同じ方向に進もうとしているが、課題は省庁ごとに別々に作られたシステムを、どこまで共通の形式で結べるかにある。
先行事例から見える成功の条件
中国の越境EC向け通関は、プラットフォームが注文、決済、物流のデータを税関へ直接送る仕組みで、処理を大量にこなしてきた。ここから分かるのは、技術そのものより、データを出す側にルールを守らせる設計が重要だということだ。
ベトナムでも、民間の電子商取引事業者や物流会社が正確なデータを出さなければ、税関側の自動化は空回りする。つまり制度整備は、役所だけでなく民間側の入力品質まで含めて初めて効果が出る。
見落とされがちな視点:通関の速さは信用の指標になる
通関が速く予測しやすくなると、輸入側の国から見たベトナム企業の信頼度が上がる。納期が読めない売り手は、広告費をかけても再購入されにくい。デジタル通関は手続きの簡素化にとどまらず、国全体の出荷品質を示す看板として働く。
ただし、効果が出るまでには時間がかかる。システムの稼働と、現場の事業者が使いこなすまでには差がある。小規模事業者向けの研修や、手数料の設計まで整って初めて、取り込める市場が広がるだろう。
ビジネスへの影響
ベトナムを調達先・販売先として見る企業への影響
日本企業にとって、ベトナムは生産拠点であると同時に、越境ECの出荷元にもなり得る。通関の予測がしやすくなれば、納期の約束が守りやすくなる。これまで「通関で何日止まるか分からない」ために見送っていた商品も、検討の対象に入る。
まず取り組むべきは、自社が扱う商品のコード(品目分類)と、価格、原産地の情報を一つの表に整えることだ。データ接続が進むほど、入力元がそろっている企業ほど早く恩恵を受ける。
今すぐ確認したい実務のチェックポイント
第一に、委託している物流会社や通関業者が、電子申告に対応しているかを聞くとよい。対応が遅れる業者に任せ続けると、制度が整っても自社だけ手間が減らない。
第二に、関税や付加価値税の扱いが変わる可能性を見込み、販売価格の改定余地を残しておく。税の計算が自動化されると、これまで見えにくかった負担が明確になるためだ。
第三に、小さく試すことだ。全商品を移すのではなく、軽くて単価が安定した数品目で出荷を試し、通関の所要日数と差し戻し件数を記録する。その数字が、次の投資判断の材料になる。